「Load Of Major!」



※これより寿君の回想と愚痴に入ります。お茶を片手にゆるりと寛ぎながら聞いてあげてください。




「立ち止まらない君だから好きなんだ!」って言ったけどさ、ちょっとは立ち止まってくれてもいいんじゃない?


君がドラフト抽選の話しをしてくれた時、もしかしたらシャイアンツでやっとバッテリー組める!なんて思っちゃって、君と別れた後スキップして帰ったら、おばあちゃんに変な顔されたよ。
その日から僕は、カレンダーの抽選日にハート印て、その日が来るのを指折り数えてた。
もちろん、僕に出来るあらゆる方法で、シャイアンツが君を引くよう応援したさ!
おかげで球団関係者におびえられてるけど、何でだろうね?
準備は万端だった。


なのに、なのに・・・。


TVでギブソンのインタビューを見て、アメリカ行き決めたって聞いた時には、世界中のTVを釘バットで叩き壊したかった。

もちろん止めないよ?吾郎君が望む事を邪魔するなんてできないよ!
まぁ、少しケンカになっちゃったのは、まだまだ僕が子供だって事だけどね。
吾郎君を見送った後、あのインタビューで余計な質問してくれたアナウンサーが、謎の奇病にかかって会社を辞めたって噂を聞いて、気が晴れたのを今でも覚えてる。

遠く離れても君の事忘れる時なんてなかった。

なのに電話1つ寄こさないってどういう事かな!吾郎君らしいって言えばらしいけど、僕達恋人だよって、日本発つ前に君の声枯れるまでわからせてあげたのに・・・。


仕方ないから、ネットで君の記事を探すのが日課になった。


初めは全然見つからなくて、見つけても誰かの記事のおまけとか、1行だけとか、1年も経ってないし仕方ないんだけどね。
そんな中見つけたのが、ギブソンJrとの乱闘記事・・・。


何やってんのさ!吾郎君!!


顔に怪我して、チームメイトに取り押さえられてる吾郎君の小さな写真があった。
理由は、ホームランを打たれて腹いせってあるけど、君はそんなことで乱闘なんてしない。

何があったの?

胸が苦しかった。もし僕が近くにいたら、その可愛い顔に怪我させる事もさせなかったし、何より誰も君に触れさせやしなかった!



それから吾郎君は3Aメンフィス・バッツに移籍。
何があったのか知らないけど、君らしい良い成績を出してきて、記事も見つけやすくなった。
当然、吾郎君が載ってる記事は全部スクラップしてあるし、写真もプリントアウトしてアルバムに入れてるよ。
吾郎君が活躍するのは嬉しいよ。
だけど可愛い姿が沢山載ると、君を狙う奴がゾロゾロ出てくるんじゃないかって心配で心配で・・・。
だいたい、写真見た限りチームメイトのスキンシップ過剰過ぎじゃない?


でも吾郎君は1年後、僕の元へちゃんと帰ってきてくれた。


この時の為に、吾郎君の好きそうなネタは仕入れといたよ。
日本代表の話だ。
案の定、君は食いついてきた。単純な所はいつまでも一緒だねv
今の僕らの実力じゃ無理だと思ってたけど、君は違った。
夜、僕の所に電話をくれて、一緒に挑戦しようって言ってくれた。いつも1人で挑戦して行っちゃう吾郎君が一緒に!もちろんOKさ!
後、さり気なくバッテリーの言葉を言うのも忘れないよ!

日本代表に選ばれれば吾郎君と一緒v
ワクワクしてたのに、NPB所属の関係で選抜チームに入れないって聞いて、もうどうしてやろう・・・じゃなくて、どうしようかと思ったよ。


茂野さんのコネで無事入れて、沖縄で過ごす日々は、あの厚木寮を思い出したね。
毎日キャッチボールしたり、話したり、何より手を伸ばせばすぐ抱き寄せれる所に君がいて、すごく幸せだった。



なのに!



試合でちょっと打たれたからって、何で急に帰るのさ!!しかも4年後に挑戦って、僕のことはどうでもいいの!?
別にいいじゃないか!コジローさんと松尾さんの○万するバットへし折ってやったんだから!
って言いたい。すごく言いたかったけど、君の理解者として言えないんだよね〜。
歯がゆいよ。すごく!

また吾郎君を見送るはめになった。だけど障害は多い方が燃えるよね☆
おじいちゃんがいつか言ってた、絶対に欲しいものは自分の全力で勝ち取りなさいって!



だからこの日から、コジローさんと松尾さんの耳元で吾郎君の名前を囁くのが日課になった。



成果は上々。2人も気になってたのか、すぐ大木監督に推薦してくれたよ!
大木監督に推薦した後の2人は、少し痩せて、開放されたような晴々した顔をしてた。
よかったね・・・ふふ。


自分自身の代表入りもさっさと決めて、やっと吾郎君の所に行ける!大会が終わるまでずっと一緒!
誰にも邪魔させない!!ってすっごく楽しみにしてたのに


吾郎君。君のその隣の男は何かな?




公園の緑の芝生の上で、3人の男が一見仲良く並んで昼食を取っている。
「まさかJrが差し入れとはな〜。もしかして偵察か?」
「そんな訳ね〜だろ。たまたま近く来たからな。」

(たまたまねぇ〜・・・)

吾郎の隣に座る男を寿也はチラッと見る。
誰かは知ってる。吾郎君にケンカ吹っかけて、バット粉砕されたギブソンの息子だ。
僕の視線に気づいて、Jrがこっちを見る。
「そいつ誰?」
「寿也。佐藤寿也。俺のキャッチャー。」

(吾郎君が"俺のキャッチャー”だってvv もう吾郎君ってばvv)

嬉しくなって吾郎君との距離をもう少し縮める。
気分が良いから自分から挨拶してやった。
「よろしくね。ギブソンJrの活躍は聞いています。」
笑顔つきで、握手の手を差し出したが
「で、こいつゴローの何だ?」
綺麗に無視された。
行き場を失った手がかなり虚しい。

(・・・さすがアメリカンだね。直球というか、ここまでされたの初めてだよ・・・)

「え?だからキャッチャーだって。」
「それだけか?唯のチームメイトか?」
こっちを見ながらJrがニヤッと笑う。お前はこの程度しか想われてないぜって言うように。

(僕は君と、どうやっても仲良くできそうもないな・・・)

「ん〜。チームメイトで、幼馴染で、親友で、最高のライバル!」
指折り数えながら言うと、最期にヘヘッと笑う。


(吾郎君・・・違うよ?確かに最初はただの幼馴染だったかもしれない。だけど、親友もライバルも、吾郎君がそう望むからなったんだ。だけど、今はもう足りない。それだけじゃ足りない)


「吾郎君」
「ん?」
「一番大事なの抜けてるよ?」
「え?んんーーー!!」


アゴをがっちり掴むと、強引に唇を重ねた。
吾郎君の頭越しに、Jrの青い目がギラギラしている。
僕はその反応に満足して吾郎君を解放すると、吾郎君は真っ赤な顔してへなへなと芝生に顔を埋めてしまった。

(ふふっv 埋めるなら僕の胸貸すのにv)


「吾郎君v 恋・人って項目抜けてるよ!v」
「////〜〜〜!!!」


モガモガと何か言ってるけど、今はそれを置いといて、Jrの方を向き、にこりと笑う。
「そういう事だから、デートの邪魔しないでくれるかな?」
Jrは真っ赤になってる吾郎君を見て、僕をもう一度睨みつけると、そのまま無言で立ち上がると、肩を怒らせて帰っていった。
やれやれ、この分だと敵はまだまだいそうだね。まったく吾郎君は本当に人を誘うんだから・・・。

今だこっちを見ない吾郎君の背中を指でツウッと触ると、ピクッと肩を揺らす。


「・・・寿のバカ・・・」
「ふふv」


とりあえず、今日は吾郎君からじっくりアメリカでの生活を聞いて、敵をしぼらないとね。
こっちにいる間忙しくなりそうだよ。


***

彼のストレスは半端ないと思います
この愚痴?書いてると、彼が気の毒で仕方ありません
ただ、これぐらいで彼が負けるとは思いませんg・・・


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