「久々だからだよね?」



僕と吾郎君が再会したのは4年生の時だ。
フェンス越しに見た吾郎君は、僕たちが出会った時と変わらず太陽のような笑顔で大きな声で僕を呼んだ。
「寿く〜〜〜〜ん!!」
「ごろーーーーく〜〜〜〜〜ん!!!!」
息が止まりそうだった。


久々に見た寿也は別人みたいだった。
昔はでっかいメガネかけてたのに、今はメガネもなくなって悔しいけど、なかなかカッコイイ。
「それにしても、吾郎くんが野球やめてなくて良かった!」
嬉しそうに寿也が笑う。
笑うとやっぱり昔の寿也に似ている。当たり前だけど。
「ああ!あの時寿くんが野球やちゃだめだって言ってくれたからな!」
「覚えててくれたんだ!」
寿也は嬉しそうに俺の手を掴むとぎゅっと握った。
「?うん!当たり前じゃないか!」
(久々だからだよな?)
4年生にもなって、男同士で手を握り合う事に疑問を持ったけど、あえてそこは考えないようにした。
「ふふふ。僕も片時も忘れたことなかったよ!」

(・・・・)
寿也に会うまで忘れていたことは内緒だ。

「そ、そうか!」
世の中知らない方が良い事もあるよな!
それに、寿也が嬉しそうだからいいよな!?


「それにしても、さっきの吾郎くんの球すごかったね!僕、すごく感動した!」
「かんどー???」
吾郎くんは訳がわからない風に首を傾げてる。
クリクリした大きな目は昔とちっとも変わらなくて、とても可愛い。
「うん!手がボールをとると、痺れるんだ!ジーンって!」
「へぇ」
吾郎くんは僕の話を興味深そうに聞いている。
吾郎くんは僕の憧れ。いつもキラキラしててかっこ良くて、僕のお手本は吾郎くんだ。
いつもいつも追いかけてばっかりだったから、こうやって吾郎くんに聞いてもらえるのが嬉しい。

「吾郎くん・・・また一緒に野球できるんだよね?」
「おう!まあ・・・一緒のチームには入れないけどな!」
ポリポリと頬をかきながら、目線を逸らす。
「・・・・そっか・・・・。吾郎くんが決めたことだから仕方ないけど、キャッチボールはできるよね!」
そういうと吾郎くんは逸らした目をまた僕の方に向けて、太陽のように笑う。
「ああ!」
吾郎くんの笑顔を見ると、僕はいつも全身がむずがゆくなる。
どうしてかわからないけど、嫌なことじゃないのはわかってる。

僕は嬉しくて吾郎くんの手を取ってぎゅっと握った。
「・・・・なあ、寿くん。」
「え?何?吾郎くん。」
吾郎くんが僕の手をじっと見て話しかける。
「この手、握るのって癖?」
「え!?」
僕は慌てて手を離した。
確かに4年生で男同士で手を握るって変だよね!
「ご、ごめんね吾郎くん!つい・・・久々だったから!」
一瞬、ついの後に何か別の事を言いそうになったけど、何を言いたかったんだろ??
「ああ、やっぱり久々だったからか!俺もそうじゃないかなーって思ってたんだ!」
はははと笑う吾郎くん。怒ってないみたいで良かった。


その後、お互いの話をして家に帰った。
バイバイと吾郎くんに振った手をじっと見た。
吾郎くんの少し固い手の感触を思い出して、ぎゅっと握り締めた。
(何だろ・・・何か手が・・・寂しいような・・・そうじゃないような・・・??)
わきわきと手を開いたり握ったりしながら、カバンからボールを取り出しその手に握らしてみた。
(何だろ???)



***

何だろ?
まだ恋のこの字も知らないお子様です
それにしても、この二人の温度差が好きv


SSメニューに戻る